2005年【文月号】
vol.57

 今年も山笠の季節がやってきました。
 博多人形師が華麗な技を競う山笠の標題には、その年その年の世相が反映されています。
今年は、大河ドラマ「義経」にちなんで、成吉斯汗義経伝(中洲流舁山)、源平壇之浦決戦(中洲流)、乱舞牛若花吹雪(キャナルシティ博多)、義経颯爽鵯越誉(エルガーラ)、勧進帳君臣之絆(櫛田神社)など圧倒的多数の山で義経物が取り上げられています。
 原則として荒々しい戦記物・武勇物を題材とする「表」に対して、「見送り」には優しい題材が選ばれます。昭和二十九年に新天町で「シンデレラ姫」が飾られた時には、伝統と格式を破ると物議を醸しましたが、子供たちに人気を博し、それ以後テレビやアニメの人気者が多く登場するようになり、商店街の宣伝にも一役買ってきました。
 今年も新生ソフトバンクホークスにちなんだ「とべとべホークス」(新天町見送り)や「躍進新生鷹」(福岡ドーム)、全国都市緑化ふくおかフェアのマスコット「グリッピ」も登場し、九州国立博物館の開館を意識し、開館記念特別展「美の国日本」をテーマとしたエルガーラ・パサージュ広場の飾り山や櫛田神社の「女王卑弥呼」もあります。
 そんな中で。ソラリアの「百合若護玄海島」は、福岡西方沖地震で大きな被害にあった玄海島の復興への願いを、島に伝わる百合若大臣の物語に込めたものとして注目されます。
 先の大戦の瓦礫の中から博多の人々を立ち上がらせたのも、焼野が原に響く子供たちの山を舁く元気な声でした。見つけてきた棒を削って組み立て、大きな木枠に配給のふすま紙を張り、奈良屋小学校の先生に豊太閤の絵を描いてもらい、「みんなの博多みんなで復興」の合い言葉を書いた小さな山を、西浜町と恵比須町の子供達が舁いてまわったのです。豊太閤を描いたのは、かつて戦乱で荒廃した博多の街を復興してくれた豊臣秀吉への想いからでした。
 勇壮な舁き手も魅力に溢れていますが、きらびやかな姿に様々な想いを秘めた山の人形をじっくり味わうのも、もうひとつの「山」の楽しみ方でしょう。



【半夏生】
 夏至から十日すぎた五日間を半夏生といいます。半夏の天候で豊作を占うとか、麦の収穫祭を行う日だと決められており、農村にとっては大切な目安の日とされています。
 とくに関西地方では、田に植えた稲の苗がたこの足のようにしっかりと根付くようにと、この日にたこを食べる習慣があるそうです。甘露煮、天ぷら、酢の物など、各家庭でいろんなたこ料理が作られるといいます。なんだかおまじないのような風習ですね。
 しかし、酷暑の前にたこを食べるのは、単なる苗えのおまじないではなく、理にかなった健康療法でもあるようです。たこには血圧やコレステロール価を下げるタウリンが豊富に含まれているからです。夏バテ防止に高血圧や血管障害などの生活習慣を予防する効果を見込んでいるとも思えませんか。
 日本の独自の風習には、自然の中で生きるための知恵とユーモアがたくさん隠されています。みなさんも騙されたと想って試してみてはいかがでしょう。

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