三、山笠に生きる男たち

創業以来、追い山の廻り止を見守り続けてきました。

福岡市博多区須崎町ニノ一。ここはいわゆる旧い「博多」と「福岡」の境目。昔ながらの風情を残す、石村萬盛堂の本店があります。そしてこの場所は、博多祇園山笠のクライマックス「追い山」の廻り止(決勝点)でもあります。
博多の三大祭といえば、博多どんたく、そして博多祇園山笠。夏とともにやってくるのが、山笠です。一トンもの山を三十人足らずの男たちが担ぎあげ、夜明けの町を奔走するスピードと重量感は、身震いするほどの感激を見る者に与えてくれます。
山のぼせ、と呼ばれるもの。それは、山笠そのものに人生を重ね合わせて立派な山を奉納するという喜びに生きる博多の男たちです。集団で力を合わせて大事を成し遂げた誇り、そして充足感。廻り止には、祭りを支える男たちのこんな思いがあふれています。
廻り止に昇き棒の先端が入る時間は、本店の二階で計測して来ました。この瞬間をずっと見守ってきたことは、萬盛堂の誇りでもあるのです。
今年もまた萬盛堂の前を、山笠に生きる男たちが駆け抜けていきます。どんたくの次は、山笠を見に来ませんか。どんたくとはまた違う、博多の心意気を感じていただけるはずです。