2019年12月05日(木)
【お知らせ】和菓子職人長池が、全国のスイーツコンテストで最優秀賞を受賞(インタビュー)
この度、石村萬盛堂の中でも上質な和菓子を取り扱う「萬年家(はねや)」ブランドの職長を務める長池博氏が、全国のスイーツコンテストで最優秀賞を受賞しました。和菓子を作り続けて今年で39年目となる長池氏に、受賞の感想や作ったお菓子についてインタビューをしました。
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―長池職長の普段のお仕事の話からお伺いします。
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普段から、萬年家及び石村萬盛堂の和菓子の中でも「手作り」となる和菓子が私の仕事領域となります。お茶会などで使っていただく上生菓子はもちろんですが、那の香や、お祝い事に使われる紅白饅頭などをお作りしております。
その他、海外のお客様が揃うパーティーなどで和菓子作りを披露したり、石村萬盛堂の店舗や他イベントなどで親子向けの上生菓子・蒸し饅頭作りの体験会を行うこともあります。
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―今回コンテストについて詳しく教えてください。
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「クインビーガーデン」という自然甘味料を取り扱う企業が開催する「メープルスイーツコンテスト」は、今年で14回目の開催となります。「ケベック・メープルシロップ」もしくは、「ケベック・メープルシュガー」を使用したスイーツが、●洋菓子部門 ●パン部門 ●和菓子部門それぞれで審査されます。
参加はプロフェッショナルのみとなり、見た目だけでなくもちろん味も審査の対象になるコンテストです。今回私は、和菓子部門で最優秀賞を取らせて頂きました。本当に有難いことです。
第14回 クインビーガーデン メープルスイーツコンテスト 表彰式について
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―受賞した「楓の恵み」をいただきましたが、上生菓子の概念を変える驚きの食感と味でした。「楓の恵み」を作る際に、工夫したことを教えてください。
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「楓の恵み」の一番のポイントは「乳製品」を使っていることです。上生菓子で「乳製品」を使うというのは、あまり想像がつかないかもしれません。乳製品を使ったのは、メープルシロップ自体が和菓子にする時、味が出にくいという点を補うためです。もちろん、メープルシロップを沢山使えば、しっかり風味を出すことが出来ますが、ものすごく甘くなってしまいます。
なので、メープルシロップをミルクと合わせ、和菓子の製法でいう、ミルク羊羹にしました。両端の白っぽい部分がミルク羊羹の部分です。羊羹を火にかけて練り上げ固める際につぶつぶとしたメープルシロップで作った錦玉を混ぜ込みました。ミルク羊羹に、この錦玉を合わせることで、よりメープルシロップの香りと風味が広がるようにしています。また、錦玉は楓の樹から浮き出る樹液の様子も表現しています。
さらに、真ん中のスポンジのように見える部分は樹そのものを表現しており、浮島という和菓子の製法でお作りしました。簡単に言うと蒸したカステラのようなものになります。
ミルク羊羹と浮島を重ね、上に楓の葉を置いています。
やわらかさにもこだわりましたね。近年、「やわらかいお菓子」が求められているように思います。お年寄りもお子さんもやわらかいお菓子が好きですよね。ミルク羊羹と浮島が一緒にすっととろけるように食感にもこだわった一品です。
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―和菓子の伝統的な技法を用いながらも、新しい視点の詰まったお菓子ですね。これからも長池職長の挑戦は続くと思いますが、今後叶えたいこと、力を入れたいことを教えてください。
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今一番考えている事は、若者への技術の伝承です。
年々和菓子職人は減少しています。私の出身の長崎の街でも、職人の減少により閉じる店も少なくありません。我が社にも、この先の未来に技術を伝える若者が少ない状況です。深刻だと思います。遅くても2〜3年以内には、後を引き継いでくれるような若手に技術を伝承していきたい、そんな若手を見つけたいと考えています。
和菓子職人の仕事について、私が若い頃の修行時は、見て覚えろ!の時代でした。師匠や先輩に教えてもらった事はほとんどなく、毎日仕事が終わってから自分で練習して覚えました。出来るようになると喜びも大きくなり、師匠から褒められ、それが嬉しくてまたやる気が出る。そうして次の技術を覚えるという良い循環で回っていたように思います。またライバルにも恵まれていました。
最近は、教えてもらうことが当たり前になっているようにも感じます。しかし、仕事を覚える喜びや相手へのありがたみを持てるような人であってほしいですね。自分で繰り返し練習して技術を身につけるような職人さんになってほしい、そしたら技術が身に付いた時の本人の喜びも大きく感じられると思います。
お茶会ではよく、上生菓子をご用意させていただきます。お茶の先生は、お菓子の勉強もしていらっしゃいます。先生たちのお茶会で色や型、素材、デザインなど独自なお菓子を提供できるよう、例えば着物の柄や花の図鑑からアイデアを蓄積することを心掛けています。自分で自分の技術を上げていくことに終わりはなく、これからも続きます。
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長池職長ありがとうございました。
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